百会②:怒り(`Δ´)の絵では、なんで湯気が頭から昇っているのか?

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脳⇔心肺循環へ血液が集まり昇る図ツボ・経穴・トリガーポイントなど
脳⇔心肺循環へ血液が集まり昇る図

はじめに

 

百会①:なんで鍼灸師は頭の天辺に鍼をするの?
なんで頭のてっぺんに鍼をするのか?―という問いに「よく効く」という実感が鍼灸師側にあるからと答えました。
そして、この効き方は、興奮⇔鎮静を司る自律神経を鎮静の方向へ引っ張るからと答えました。

百会①:なんで鍼灸師は頭の天辺に鍼をするの?
はじめに 鍼灸を専門としている施術所へ行くと、頭のてっぺんに鍼をされたという経験を持つ方が沢山おられると思います。 「腰痛なのになんで頭に鍼なんかするんだ?」とか、 「肩こりなんだから肩に鍼をしろよ!!」とか 思っている方も多い...

実はこれは、百会は特別なツボだという説明にはなってません。他にもそういうふうに説明できそうなツボは沢山あります。もっと言うとツボの刺激だけが自律神経を鎮静の方向へ誘導するわけではありません。横になっても鎮静するだろうし、深呼吸や呼吸法だって鎮静に働くと思います、そこで、もうちょっと突っ込んで考えてみたいと思います。

自律神経が身体全体の血行に影響を与える様子を考えてみる

もう少し西洋医学の用語や概念を借りながら考えてみます。現在の私たちは「からだ」を直接考えたり感じたりするには鈍くなりすぎています。西洋医学的な用語を経由して、東洋医学的な感触にたどり着く方が回り道に見えて近道なのではないかと私は考えているからです。

血液の動き

興奮・緊張→手足の細動脈を収縮させて中枢系へ血液の循環を集める(交感神経が興奮、副交感神経は抑制)

交感神経亢進→心肺脳へ血液を集める

鎮静・弛緩→手足の細動脈を拡大させて全身へ血液が巡るように導く(副交感神経は興奮、交感神経は抑制)

副交感神経亢進→全身へ血液が巡る

となります。
この絵を見比べながら身体全体の血液が大局的に動く方向をイメージしてみます。すると上下方向へのベクトルを持つ血液の動きが隠れていることに気付かされます。

脳⇔心肺の循環へ血液が集まり昇る図.png
脳⇔心肺循環から全身へ血液から散り降りる図

百会の位置は・・・

この身体全体の中で上下に動く血液の上端に位置するのが百会ということになります。
ここに百会があるのは、偶然ではないだろうと私は思います。勝手な憶測を言ってしまえば、
百会に鍼や灸をされたりすると、その刺激を身体は血液が上に昇りすぎている信号と勘違いをしてブレーキをかけるのだと思います。もともと、人間の身体はバランスを調整する働きがあります。(ホメオスタシスと言います。これも西洋医学用語で恐縮です・・・)。この仕組みが百会への軽い刺激をキッカケにして働きだすのだと思います。

自ら感じる「からだ」という考え方の方から言えば、
「百会への鍼や灸での働きかけから、頭に血が昇っている状態であることを「からだ」は認識しなおして、血液を降ろす方向へ「からだ」のモードを切り替えだす」と言えるのではないでしょうか?

血液が上下する実感を「からだ」の中に探してみる

頭に血液が昇る感覚

顔が赤くなる

怒りを覚えたり興奮したりすると顔が赤くなります。血液の色が赤い色なので実感としては血液が昇ってきているのが実感されると言えると思います。

ほてり

同時に顔が赤くなると顔が熱く感じます。
いわゆる”ほてり”です。

このことから、
血液が集まってくると熱くなってくる
という感覚法則を引き出してもよさそうです。
(検証はみんなの感覚を使い「からだ」で検証して下さい!)
この感覚法則を正しいと仮定して顔から頭全体に意識を向けると
血液が上ってくる感覚(らしきもの?)をさらに探すことができます。

のぼせ

頭全体が「今なんだか熱いな」と感じるのはみんな普段からよく感じていることだと思います。これを【血液が集まってくると熱くなってくる】という感覚法則に当てはめると、
頭に血液が昇ってきている状態と言っても問題なさそうです。
マンガなどで
怒った人物や緊張している人物に温泉の湯けむり♨のようなナミナミを頭の上につけるのは
この状態を感覚的に記号化したものだと言えると思います。

のぼせ”が血液が昇ってきている感覚だとすれば、
血液が昇ってくるのは精神的な緊張や怒りだけが要因というわけではないらしいことにすぐに気付くと思います。
春・秋の温度差が激しい時なんかも”のぼせ”ます。
また、更年期障害のよくある症状の中にも”のぼせ”があります。
便秘の時にう~~んと気張ったりする時も”のぼせ”を感じます。
つまり、さまざま要因が自律神経を介して
血液を昇らせる=”のぼせ”を引き起こしているのが想像できます。
精神的なストレスもあれば、温度差のような環境の変化もあります。
内臓の状態やホルモンの加減まで色々な背景が控えていることが想像できます。

それが、
昔から鍼灸師は様々な症状に百会を使ってきた背景だと思います。

そしてこの視点を延長して考えれば、
百会へ鍼や灸を選択する際の方針も、まず、
この頭に血液が昇ってくる感覚を弛めることが出来るのかどうか
ーという視点から検討するべきだと言うことになります。
「めまいだから、百会にする」「頭痛だから百会にする」
というのではなくて頭に血液が昇ってくる感覚を弛められる可能性の高さで
選ばれるべきなのです。

そして、反対に
頭痛やほてりといった症状そのものへにだけ着目していると
百会の効果を見逃してしまうことも沢山あります。
それを防いでいくためにも
血液が昇る感覚が弛めることが出来たかどうか
ーということにチェックポイントを置かなければなりません。

鍼灸師はそれを確認するために、
絶えず脈や顔の肌つやや色合いの変化に注意を払っているのです。
つまり血液が昇る/降りる感覚の変化に注意を払っているのです。

頭に血液が昇る感覚に伴いやすい症状

頭痛

全てがそうだというわけではありませんが頭痛の中には、頭に血液が昇る感覚に伴うものが結構あります。
やはり、頭全体が熱い感じを伴います。百会あたりに手のひらをおくと熱い感じを受けます。
そして、痛みの種類がガンガンやズキズキなどと濁音系の繰り返しで表現されることが多いです。
その場合、百会が効果を発揮する可能性は高くなります。

めまい・耳鳴り

めまいや耳鳴りの中にも、頭に血液が昇る感覚に伴うものがあります。
これも頭痛と同じような感覚を伴うはずです。
この場合、頭痛に出るのか耳周辺にでるのかは、ほんのちょっとした血液の昇り方の違いと言えるかもしれません。
症状としては、激しい回転性のめまいやキーンという高い音がする耳鳴りなどが多いと言えます。
この場合も、百会が効果を発揮する可能性が結構あります。
中には、百会に一本鍼をしただけでめまいが治まってしまったとか
耳鳴りがほとんど止まったとかいうこともありえます。

血液が上に集まったために頭から下に起こる症状

手先・足先の冷え

頭へと集まった血液が手足から集められたものだとしたら
当然、手足は冷えることになります。
手先足先に細動脈が多いのでこの場合は手先足先から冷える感じになります。
このケースでも百会への刺激で手先足先へと血液を戻していく方向へと
誘導することが出来ます。

内臓の下垂

血液が上がってしまったせいなのか、交感神経の亢進のせいなのかはわかりませんが、
上記の状態のような時は内臓の動きがわるくなります。すると、内臓は自身の重さで下に垂れ下がってきます。
すると、下腹がポッコリでてきます。
それを支える骨盤の底面では、脱肛や子宮脱、痔といった症状を引き起こしやすくなります。
痔の治療に上下で真反対にある百会が使われることがあったりするのはこのためです。

頭から血液が降りる感覚

反対に頭から血液が降りていく感覚を伴う症状も考えることが出来ます。

立ちくらみ

まず、“立ちくらみ”が考えられます。
座っていて急に立ち上がると頭がクラクラとして足元がよろめくような症状です。
立ち上がった勢いで頭の血液が下がるので脳の血液への供給が減り一瞬意識が遠のく感じになり
よろめいてしまうと説明されています。
本来は、立ち上がった瞬間、自律神経が働いて抹消の血管を収縮させて
血液が上に昇る力を発生させて下がる力を打ち消しているのです。

けれどもそれが一瞬うまく出来ずに、頭(脳)から血液が下がり
意識が遠のいてしまうのが立ちくらみなのです。
この時、頭の中で何かが下がる感じがあるのは大抵みんな経験していることだ思います。
この何かが下がる感じこそ”頭から血液が降りる”感じです。

もちろん、少し立ちくらみが少し起こるくらいなら体調としては特に問題はないです。
けれども、頭に血液を昇らせる力が少し落ちた状態を暗示しています。

目がかすむ

頭から血液が降りやすい状態になっているということは
脳への血液の供給が少なくなりがちだーということです。
すると、脳の出先である目の働きが落ちます。
もともと、目は大量の血液の循環を必要としています。
少しの血液供給の減少で働きが落ちてしまいます。

つまり、頭から血液が降りる感覚の中に
”目がかすむ”という感覚があるのです。

ブラックアウト

もっと、沢山、頭から血液が降りてしまうと、
”目がかすむ”を通り越して“ブラックアウト”といって
目の前が真っ黒になり、意識を失います。

意識がぼんやり

頭から血液が降りてしまい脳に血液供給されなくなると
意識は無くなってしまいます。
意識が無くなってしまうような事態までいくと
これは大変だと周りも気付くので放っておかれることはないのですが、
少し血液が降り気味だよな―ぐらいだと
意識が少しぼんやりするくらいでなかなか気付いてもらえません。
本人も気づかないくらいの意識がぼんやりということは
結構日常的に起こっていることです。

そんな時は頭から血液が降りた状態になっていることが多いです。

百会で頭へと血液を集めることは出来るのか?

ここまで読んでくると、

「百会は反対に頭に血液を昇らせることもできるのではないか?」

という疑問が浮かぶと思います。

副交感神経が亢進→頭から血液が降りる

となっている時に百会に鍼をすることによって

百会に鍼

交感神経が亢進
(副交感神経の抑制)

頭に血液が昇る

という可能性です。
私の体験や感覚から言うと
上のような操作は「条件が整えば出来る」と言えます
実際にそのような方向で意図して鍼をすることもあります。

こう答えると
頭に血液が昇った状態の時に
交感神経の興奮を抑えようと思って鍼をしたのに
ますます興奮してしまったーということが起こるのでは
と心配になる人もいると思います。

けれども、あまり心配する必要はありません。
多くの場合、頭に血液が上がってしまった状態というのは下がるキッカケを待ったような状態になっています。
交感神経は、何かの刺激で副交感神経に切り替わるのを待っているのような状態です。
なので、ごく普通に軽く刺激している限り下がる方向へ動きます。
これをさらに上げるように仕向けるにはかなり意図的なことを行う必要があります。

なので、軽い刺激を様子を見ながら行っている限り
頭へさらに血液を昇らせてしまうことはありません。

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