頚椎(ケイツイ)
いわゆる、
首の骨の解剖学から見た呼び方です。
胸や腰といった
他の脊柱の骨と同様に、
7つの頚椎が
縦に積み重なって
首の骨を形作っています。
けれども、
胸や腰と
見た感じかなり違った印象を
受けます。
これは、
首という人体の中でも
比較的小さくて狭い部分に
7つもの頚椎が
押し込まれているために、
縦に圧縮されたような形に
なっているためです。
胸の部分の
胸椎は12個あります。
首よりはかなり多いですが、
胸の大きさを考えると、
頚椎は狭い範囲に
ギュッと
詰まったような状態なのがわかります。
腰の部分の
腰椎にいたっては
5個しかありません。
腰の大きさを考えると、
首の骨が、
いかに細かく分かれているのかが
かわかります。
【なぜ細かく分かれているのか?】
これは、
首を
大きく、かつ、細かく
動かしたいからです。
首の上に
乗っかっている頭には、
眼、耳、鼻といった
感覚器官がついています。
この感覚器を
効率よくフル活用するためには、
首が
大きくかつ細やかに
動く必要があるのです。
目は
目標に向かって
しっかり方向づけする
必要がありますし、
耳は
音が拾える角度を
探りあてる
必要があります。
鼻だって
匂いのたまってる場所に
鼻を近づけていく
必要があります。
つまり、
首はまわりの環境から、
役に立つ情報を
より集めるために
細やかに大きく動く
必要があるのです。
ここから、
首の動きについて
すぐわかることがあります。
首の動きは
回りの音や光、匂いに
敏感に反応して
絶えず動いている
ということです。
これは
オートマチックな動きです。
私達が
意識しないうちに
首は動いてしまっています。
ちょっと、
自分の首の動きを
意識的に観察してみて下さい。
回り環境にあわせて
自然に首が前のめりになったり
後ろへ逃げたり、
捻れたり、
伸びたり縮んだりしてるのが
わかると思います。
何かに興味を持つと、
首は前にグッとつきだしてきて、
上に伸びてきます。
首が少し長くなったように
見えます。
緊張したりすると、
首を縮めて丸くします。
肩の中に首を引っ込める
かのように見えます。
よくよく観察すれば
他にも様々な動きを
見つけることが出来るはずです。
いわゆる
“首を長くして待つ”
とか
“亀ように首を縮めて恐縮した”
などの
首の動きが
別の意味へと
つながるような表現は、
このような感覚を表したものです。
この環境に
対する頭の位置を
調整するという首の動きは、
頭の位置を変えて、
身体の重心を
調整しなおしている
ということと表裏一体です。
ここに、
体のトラブルの種を
見つけることが出来ます。
緊張が続いたりして、
偏った首の姿勢が慢性化すると、
その偏った姿勢が当たり前になります。
こまやか動かすために
細く小さくなっている頚椎の関節には、
長時間の偏った姿勢は
かなりの負担です。
その上に、
頭は4~5㎏あります。
これを支える頚椎の関節まわりの
小さな筋肉はすぐ疲労を
ためてしまいます。
疲れた筋肉は
硬くなって伸縮性が
なくなってしまいます。
その結果、
文字通り
“首が回らなく”なってしまうのです。
これが、
首コリや寝違いだけで
収まっていれば、
まだ良いのですが、
慢性化したコリや動きの悪さは
当たり前になって
気付かれないことがほとんどです。
その筋肉の疲労が
頚椎の両サイドから出る
頚神経や脳神経を介して
全身へと影響を及ぼしていくのです。
肩コリの多くがそうです。
また、姿勢を悪くして
猫背になる可能性が高まります。
そこから、
腰痛になったりします。
内臓にも影響を与えます。
迷走神経といった自律神経を介して、
不整脈や動悸、
消化不良や胃酸過多、
下痢や便秘といったいわゆる
“自律神経失調症”なども、
首回りを起点して起こることが
沢山あります。
やっかいなのが、
首の動きが無意識的なもの
であることです。
多少動きにくい頚椎が
一つ二つあっても
本人に自覚が表れにくいことです。
その動きにくい首を
当たり前にしてしまって
全く気にならなくなってしまうことです。
そして、
同じような緊張や姿勢を
続けてしまい
気付かない疲労や負担を
どんどんため込んでいくのです。
これを防いでいく
根本的な治療は
自分の首が固まっているという
自覚を促すセルフチェックです。
つまり、首を動かして確認する
ということです。
首を緩める
鍼灸や整体が
どんなに素晴らしい効果が
あったとしても、
養生につながるセルフチェックが
一番の根本治療になる理由です。