はじめに
整体をリウマチの患者さんに使って有効なことが多々あります。
もちろん、炎症を起こしている関節に無理をさせれば余計炎症がひどくなってしまうこともありえます。
では、いったいどうゆう風に整体はリウマチに対して使えるのでしょうか?
痺証としてのリウマチ
東洋医学(中医学)からみたらリウマチは“痺証”というくくりの中に分類されます。
“痺証”とは、
様々な要因から「気血」の巡りが悪くなり、そこへ外と内から来る“風・寒・湿の邪”が溜まってついに炎症(化火)を起こして発症すると考えています。
(→痺証:リウマチに対してだけでなく他の病気にも応用できる大切な概念)
ゴミ屋敷に家事という例え
“痺証”を例えで考えてみると「ゴミ屋敷で起きる火事」というのが思い浮かびます。
家に持ち込んだ食べ物、勝手に配達される郵便物等がキチンと処理されず家がゴミ屋敷になってしまいちょっとしたキッカケで火事になってしまった―というイメージです。
この例えで言えば
“邪”とはたまるゴミです。
“火事”とは炎症です。つまり、リウマチの腫れとか痛みといった症状そのものになります。
火事にならないようにするには、火元に注意することも大切ですが、ゴミを捨てて燃えるものが溜まらないようにするのがもっと大切になってきます。
整体≒ゴミを捨てるための導線を作る
ゴミ屋敷の火事という例えから整体を説明してみると、
整体は、このゴミ=“邪”を捨てるために動線を用意する行為という感じです。
家の中はゴミが積み上がり人が通るのもやっとです。この場合、手当たり次第ゴミを運び出そうとするのは能率が悪いです。ヘタをすれば奥のゴミを手前に移動させただけで家全体から見ればゴミはちっとも減ってない―なんて事態も起こってしまうかもしれません。
まず、確保しなければならないのは、家の中から外のゴミ捨て場までスムーズに動ける導線を確保することです。
そうやってやっとゴミ捨てが効率よく行うことが出来るようになるのです。全体を見回しながらゴミを集めてサッと移動してゴミ捨て場まで素早く運ぶことが出来るのです。
整体は重力に対する「からだ」の反応を見ながら前後左右上下のバランスを整えていく技術です。けれども最終目的は「気血」がスムーズによく巡る状態にすることです。
(→整体とは)
この「気血」がスムーズに巡る状態にすることこそが、“邪”を捨てる導線を確保するということです。つまり、
【整体は“邪”を捨てる導線を作る】
という行為になるのです。
手の感触からリアリティーを紡いでいく
なぜ、こんな考え方が採用されるのか?
ここまで伝統的な生体観・病態観に則ってリウマチと整体の関係を説明をしてきました。けれども、私は中医学の本にそう書いてあるからとか、東洋医学の伝統に則っているから素直にそう信じて書いているわけではありません(どちらかというと疑り深い方の人間です)。
このあまり科学的とは言えない素朴な説明に私がなぜ同意の席をゆずるのか?
これは、手から得られた感触の実感が、この説明にリアリティーを与えてくれているからなのです。
“邪”を捨てる感触
ブヨブヨと触れる“湿邪”
この“たまるゴミ”≒“邪”の中でもリウマチに大きく関与しているなと感じられるのは、“湿邪”です。中医学の説明でも、“風・寒・湿の邪”の中で“痺証の中心的な役割を果たしているとされることが多いのが“湿邪”です。
“湿邪”はムクミや浮腫、腫れぼったい感じ、水っぽい感じとして触知されます。目の下のたるみやぼやけた顔の輪郭ラインとして見た目でわかることも多いです。
敢えて西洋医学的な言葉を借りて説明してみれば、リンパ液、組織間液といった細胞間を移動している体液がなんらかの理由で停滞して生理的な活性を失い害を与えるようになったものと言えると思います。
恐らくその中には細胞が代謝したあとに残る廃棄物のタンバク質や糖化物質等もろもろの物質が溶けているはずです。これらの物質が炎症を拡大させてしまう培地のような役割を果たしているだろうことが想像できます。
“湿邪”の動きを手で感じる
この“湿邪”は普通の関節痛や神経痛にも普通に見られるものです。けれども、リウマチの人では特に多く見られ、その炎症と密接に関係していることが手の感触から直接感じられます。
リウマチの人の関節を触らせてもらうとぶよぶよとした“湿邪”の感触が沢山感じられ、それが強くなった部分が熱くなって炎症を起こしているのが感じられます。
では、
この“湿邪”の感触が整体をすることによってどのように動いて変化するのかというのを例を上げて書いてみましょう。
例
Aさん、70歳代
数年前にリウマチ発祥
肘・肩・指・膝・股関節に
炎症して腫れ、痛みを訴える
特に下半身は全体に浮腫みがち、スネは指で圧すると痕が残る。
それと比例するように膝・股関節の腫れ・熱感は強く痛みも強いと訴える
東洋医学的な見立て
“湿邪”を中心とした“痺証”
“湿邪”が供給される背景を下半身衰えによるの血行不良(いわゆる腎虚)によると考えた
施術
“腎”の働きが上向くように腰の腎兪・三焦兪というツボに鍼・灸を行った
そこから、“お尻すべり台”の姿勢をとってもらい全身の「気血」を巡りを促す百会のツボに鍼をして20分置鍼
結果
お尻すべり台の姿勢(整体)20分後、下肢を観察させてもらうと
下肢の浮腫みはかなり弛み細くなったのが一目でわかるくくらいになりました。
(→お尻すべり台(お尻下肢上げ):整体)
肌のパーンと張ってピカピカしていのが弛んで細かいさざ波のようなシワシワがいってます。
触らせてもらうと圧痕が残るようなブニュブニュ感が下肢全体から取れているのがわかります。
腫れていた膝や股関節まわりも触らせてもらうと関節周りにあった纏いつくようなブヨブヨとした“邪”の触感が縮小しているのがわかります。
ブヨブヨの“邪”の触感が縮小するのに伴い熱感もかなり減っています。
本人にたずねると疼くような痛みがなくなり膝や股関節が曲げやすくなったと
おっしゃってました。
また、施術後ただちにトイレに行かれて
沢山の排尿があったとおっしゃられておりました。
普段の3~4倍はでたそうです。
その後、自宅での養生に取り組んでもらうと同時に、同様の施術を定期的に続けた。
一年ほどで使用していた免疫抑製剤を中止できるくらいまで安定した。
この例では、
下肢を中心に溜まっていた水分が
下肢→お腹→尿という風に移動して最後に排泄されたと考えるのが妥当でしょう。
この過程を手の感触が追いかけて追認していっている感じがわかると思います。
“お尻すべり台”という整体を施すことによってそれが動き出す感じを実感として
感じているというわけです。
加えて、その水分の動きといわゆる“邪”の感触と痛みや熱感と連動しているのを
手のひらで直接感じているというわけなのです。
そして“湿邪”が排出される導線を
整体によって(お尻すべり台)をすることによって
導き出しているのを確認しているのです。
手で感じる実感が微調整につながる
このように“湿邪”に限らず“邪”全般にこのような手の感触を通じた“邪”が動く感触
“邪”が減る感触があり、それを元にこのような主張をしているというわけです。
もちろん、いつも上記のようにすんなり行くというわけではありません。
あちらを立てればこちらが立たずということが往々にして起こります。
その時、やはり役に立つのが手の感触なのです。
リウマチになってしまうような“邪”≒燃えるゴミが溜まった「からだ」は
動かしすぎたりストレスがかかり過ぎたりすると
すぐに炎症≒ゴミが燃え出すということが起こります。
けれども、ゴミを捨てる必要もあるので
「からだ」を動かして排出を促すようなことを少しづつでもやっていきたいのです。
炎症が起きないようにしたい
けれども「からだ」を動かして“邪”も排出したい。
ではどうするのか
ゴミが燃え出さない程度に
ゆっくりゆるく動かしてゴミの排出を促すのです。
このゆっくりゆるく動かすという
さじ加減を決めるのは最後には手の感触ということになるのです。
(→さじ加減が大事!)